全体分析
全体的に理論分野の問題が増加し純粋な無機物質・有機化合物の問題が減った。ただし、理論分野と融合し選択肢に紛れ込む形で出題されいるものもある。
無機物質の気体の性質・ルシャトリエの原理・ヨードホルム反応など頻出だが出題されていない項目もあった。
選択肢問題はこれまで5-6択問題が大半を占めていたが本年は4択問題が増えることとなった。
思考問題や手間のある計算問題が急増したことに伴い難易度を調整する目的があると思われる。
平均点は51点程度で全体に難しい年のセンター試験程度の難易度の落ち着いている。
第1問
理論化学前半の内容。 一部に無機物質。
正誤判断×3の8択問題が出たことと数値を選択ではなく直接答えさせる問題が出題されたが難易度、形式ともセンター試験と大きくは変わらなかった。
第1問設問別分析
問1.
2つの条件に適合する元素を選択する問題。物質の構造と無機物質の両方の知識が必要。条件が2つあるが実は片方の条件だけで正答できる。
問2.
単位格子の1辺の長さと密度、モル質量からアボガドロ定数を計算する問題。体心立方格子とみて構造をイメージできるかがポイント。
問3.
分子間力に関する正誤判断×3問
すべて正答すると正解にならない点で厳しいが一つ一つは基本的問いである。
問4.蒸気圧に関する中問。
a シャルルの法則と蒸気圧の問題。
新形式の2桁の数値を答えさせる問題で解きにくい。
b 加熱したときの圧力変化を考える問題。
100℃のときの圧力を気体の状態方程式を使って計算することを思いつけるかがポイント。
第2問
理論化学後半戦。 小問のほか水の分子間結合をテーマにした中問も出題された。
中問とはいえ各問題に関連はないので実質は小問集合といえる。
また無機・有機の項目を含む正誤判断問題も含まれた。
第2問設問別分析
問1.
光にかかわる反応を問う選択問題で、無機物質・有機化合物に関する選択肢も見られた。グルコースの燃焼の逆反応を考えれば知らなくても正答にたどり着ける。
問2.
未知の電池をテーマにした計算問題。
素材こそ未知だが反応式から量的関係を考えればよい。
問3.
水の昇華と結合をテーマにした中問。それぞれは独立している。
a 状態図の中で昇華する条件を考える問題。
2017年のセンター試験本試に同様の出題がなされている。
b 氷の結晶構造から水素結合の結合エネルギーと昇華熱の関係を考える問題。
一つの水素結合二つの分子が関係するのがポイント。
c 与えられたエネルギー図から水の昇華熱を考える問題。
ステップ数が多く計算が手間で、エネルギー図に慣れているかが重要になった。
第3問
無機化学。
光化学反応をテーマにした中問が出題された。 錯イオンが反応式に含まれるので無機化学の見た目をしているが、実質は理論化学の問題である。
第3問設問別分析
問1.
塩化ナトリウムの融解塩電解に関する選択問題。それぞれは典型的な選択肢である。
問2.
条件から金属元素を決定する問題。形式としては典型ではあるが条件が入り組み解きにくい。
問3.光化学反応の実験を素材にした問題。
a 鉄イオンの検出に関する問題。選択肢が少ないので比較的解きやすい。
b 反応式の量的関係を考える問題。題意が読みとれるかがカギ。
c 反応の進んだ割合を考える問題。ステップ数が多く難易度は高い。
第4問
有機化合物・高分子化合物 第5問がテーマ問題になったためかここで有機化合物・高分子化合物がまとめて問われることになった。 結果として有機化合物の出題量が減ることに。 問題自体はややこしいものもあるが形式自体はセンター試験とは変わらない。
第4問設問別分析
問1.
芳香族炭化水素の反応に関する問題。正答はやや細かい知識なので消去法を効果的に用いたい。
問2.
油脂に関する選択問題。細かくは覚えていないかもしれないが分子間力と融点沸点の関係を思いつけば導き出すことができた。
問3.
脂肪族アルコールについて、反応後の生成物の数を考える問題。
a ケトンが生成するアルコールを考える問題。
比較的基本的であった。
b 脱水によって生成するアルケンの異性体の種類の多いものを考える問題。
すべての選択肢を検討する必要があり手間がかかる。
問4.
高分子化合物に関する選択問題。
少しややこしい選択肢もある。
問5.
ポリペプチド鎖の長さを計算する問題。
見慣れないため落ち着いて計算する必要があった。
第5問
グルコースに関する実験をテーマにした総合問題であった。
題材がグルコースなので高分子化学の問題っぽいが理論の反応速度・平衡の問題である。
それぞれの小問は独立していて連動して間違うことはないように工夫されている。
第5問設問別分析
問1.α-グルコースとβ-グルコースの平衡に関する出題であった。
a 表を正しく読み取れるかを問うているようで易しい。
b こちらも表から読み取るだけである。
c 平衡定数を計算することができるかが重要であった。
問2.グルコースをメチルエステル化する問題。
メチルエステル化により α型とβ型の変化がおきないことに気づくことが重要であった。
問3.グルコースをある酸化剤で分解して得られた有機化合物についての問題であった。
a 条件から有機化合物を決定する問題。
比較的シンプルな構造推定問題である。
b 反応したグルコースの物質量を考える問題。
Y・Zの構造を推定した上で化学反応式を立式する必要があった。
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