2023年1月に実施された共通テストの化学の分析です。
分析結果をふまえて2024年共通テストの対策についても考察しています。
全体分析
実験や未知の知識を題材にして複雑な計算問題やグラフ問題が多く出題されました。
難易度としては各予備校昨年(2022年)並とはしています。
しかしそもそも昨年がとても難しい年だったので、「昨年に引き続き難」というのが評価としては妥当なところです。
分量
制限時間60分に対して大問5問で、小問は全部で30問でした。
1問あたり2分の計算ですが、解答に5分以上かかるような複雑な計算問題や考察問題が出題されるにもかかわらず、
短時間で即答できるような単純な選択問題が少なく時間的に厳しい内容でした。
特に計算問題はおよそ半分の14問出題されており、よほど手際よく計算問題を処理できないと制限時間以内に解ききることは難しい内容でした。
与えられたデータをもとにグラフを作成しないといけない問題も出題されており、これは制限時間の厳しい共通テストにおいてとても時間のかかる厳しい問題でした。
難易度
共通テスト第1回である2021年から平均点・標準偏差は以下のように推移しています。
(2023年は得点調整で平均点が上昇しています。科目自体の難易度を比較するため得点調整前のデータを使用しています。)
2021年 | 2022年 | 2023年 | |
平均点 | 57.59 | 47.63 | 48.56 |
標準偏差 | 20.01 | 17.57 | 19.82 |
偏差値60ライン | 78 | 66 | 69 |
偏差値70ライン | 98 | 83 | 89 |
偏差値40ライン | 38 | 31 | 29 |
※偏差値○ラインはその偏差値に達するのに必要な点数
平均点は50点を割っており2022年とほぼ同じくらいの難易度でした。
この2年は偏差値70クラスの受験生でも90点をとるのが難しい、難易度の高い問題が複数含まれています。
一方で時間をかければ確実に正答できる問題もある程度はあって、中位層にとってはなんとか平均までは得点しやすい一方で、高得点を狙う上位層にとっては思うようにいかない厳しい内容だったといえます。
出題分野
第1問 | 物質の構造 | 化学結合・コロイド・理想気体の状態方程式・単位格子 |
第2問 | 物質の変化 | 熱化学方程式・電気分解・平衡・反応速度 |
第3問 | 無機物質 | ハロゲン・金属イオン・1族元素・2族元素・マグネシウム |
第4問 | 有機化合物・高分子化合物 | 脂肪族有機化合物・芳香族有機化合物・高分子化合物・油脂 |
第5問 | 総合問題 | 酸化還元・平衡・未知のグラフ(吸光度による濃度計算) |
第1問、第2問が理論分野からの出題で、第5問の総合問題も実質的に理論分野の問題でした。
そのため全体としてかなり理論分野に配点が片寄っています。
特に第4問に有機化合物・高分子化合物が詰め込まれているために、高分子の問題は全体で1問4点のみでした。
2024年度の対策
2021年に共通テストに変わってから、無機物質・有機化合物の比重が低くなり理論分野の比重が非常に大きくなっています。
無機物質の問題でさえ理論と融合している問題もある始末で、理論分野をある程度理解していることが最低条件になっています。
そのため、模試で平均点程度得点できるレベルになるまでは理論分野を中心に学習していくのがよいです。
無機物質・有機化合物・高分子化合物については出題比重が小さくなっていることと、理論の知識を前提にしないと解けない問題が増えていることからも、ある程度後回しにしておきます。
また、計算・考察など時間がかかる問題が非常に多いため、それらに時間を割くため比較的簡単な問題をできるだけはやく解く訓練をしていくことも重要です。
特に高得点を目指す人は、時間のかかる考察、グラフ問題にできるだけ時間を確保するために、典型的な選択問題や単純な計算問題はノンストップで解答できるまで習熟しておくことが望ましいです。
一方で、それほど高得点が必要でない場合はいっそのこと考察問題は簡単にすませて典型問題をミスなく確実に取っていくのがよいです。
難易度の高い問題がおおく惑わされがちですが、実は平均点程度ならちりばめられている比較的典型な問題をすべてとれれば届きます。
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